個別株投資を実践している方も多いのではないでしょうか?
インデックス投資は多くの投資家から人気がありますが、個別株投資も高い人気があります。
個別株投資の中でも、「高配当株投資」を行っている人は多くいますが、安定した高配当を受け取るためには、営業利益率が重要な指標となります。
特に、2022年はロシアによるウクライナ侵攻の影響もあって原材料の価格や輸送コストが上昇した結果、様々なモノやサービスがインフレしています。
株式投資は一般的に「インフレに強い資産」ですが、個別株投資をすることでキャピタルゲインとインカムゲインの両方を得ることが可能です。
今回は、個別株投資をする際に、優良企業か判断するための重要な指標である「営業利益率」について詳しく解説していきます。
営業利益率とは
営業利益率とは、「売上高営業利益率」とも呼ばれています。
売上高から、売上原価や販売費・一般管理費などの諸経費を差し引くと、営業利益が計算できます。
営業利益率とは、この営業利益の売上高に対する割合のことを指しており、「本業でどのくらい効率的に利益を出せた」を知ることができる指標です。
営業利益率は
「営業利益÷売上高×100」の計算式で算出できます。
営業利益率が高ければ高いほど「効率よく利益を上げている」ことになり、逆に営業利益率が低ければ「無駄なコストが多い」「本業で効率よく稼げていない」ことになります。
営業利益率が低いと、競合他社よりも優位性が低いことを意味しており、また人件費・賃借料・移動交通費・通信費・広告宣伝費などで余計なコストを支払っている可能性が高いです。
投資家目線で見ると、当然のことながら営業利益率が高い会社が魅力的な投資先となります。
また、営業利益率が高い企業は、「経営が安定している」と評価をすることもできることから、安定して保有し続け、安定して配当を得るためにも必ずチェックするべき指標と言えるでしょう。
営業利益率の重要性
先述したように、営業利益率は「企業の稼ぐ力」を評価するにあたって、非常に重要な指標です。
また、営業利益率の高低は、「企業のインフレに対する耐性」を評価する際にも役立ちます。
営業利益率の重要性について解説していくので、参考にしてください。
インフレが起こると企業収益が圧迫される
2022年はロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、世界的に原材料の価格や輸送コストが上昇してモノやサービスが高騰しています。
しかし、競争力が高く、企業が負担しているインフレ分を消費者に転嫁できる企業は、安定して収益を上げることが出来ます。
しかし、逆に競争力が低く、消費者にインフレ分を転嫁できない企業は自社でインフレ分を抱え込むことになるため、十分に収益を上げることができません。
具体的には、エネルギー価格の上昇に伴って事業所の光熱費が上昇し、輸入に際しての輸送コストが嵩み、さらに人手不足による人件費の上昇などが起こると、企業の利益が圧迫されてしまいます。
企業収益が圧迫されると企業の体力が削られ、満足に株主還元を受けられなくなる可能性があることから、営業利益率をチェックすることは重要です。
営業利益率でインフレ耐性を知る
インフレは企業にとって大きな逆風ですが、営業利益率の低い企業ほど受けるダメージも大きくなります。
例えば、売上高が同じ企業で、営業利益率が10%の企業と3%の企業を比較してみましょう。
インフレの影響で、コストが売上高の1%上昇した場合、営業利益率10%の企業は10%の減益となります。
一方で、営業利益率が3%の企業の場合は、利益が3分の2になってしまうため、事業の利益を大きく圧迫していることが分かります。
このように、営業利益率はインフレの耐性を測るための指標としても使えることから、2022年のように大きなインフレが起きているタイミングでは、特に重要度が高まります。
営業利益率は競争力を測る指標にもなる
営業利益率は、インフレへの耐性だけでなく、企業の競争力を測る指標でもあります。
営業利益率を高めるためには
・営業効率を上げる
・モノやサービスの単価を下げる
・コストを下げる
上記に取り組む必要があります。
競合他社と比べて営業利益率ということは、自社の商品やサービスをより高く売る力や、より低コストで製造・仕入れを行う力があることの証明です。
また、営業利益率を通じて、純粋な競争力や販売力だけでなく、ブランド力や事業の参入障壁の高さなど、企業の総合的な魅力を測ることができます。
例えば、ネームバリューがありブランド力の高い企業であれば、買ってくれる顧客が多いため、商品を値上げしても大きく売り上げを落とすことはありません。
このように、インフレに伴うコストの上昇を販売価格に転嫁できることから、インフレの状況においても高い営業利益率を保てるわけです。
つまり、2022年のように資源高などのコスト上昇の影響を強く受けている中でも高い営業利益率を維持できている企業は、総合的な魅力が高い企業です。
今後さらに進むであろうインフレにも対応できる可能性が高いことから、長期的に安心して保有できる株式と言えるでしょう。
営業利益率の目安は?
業種によって営業利益率の目安となる数字は異なりますが、一般的な水準は約10%なので、営業利益率が10%以上であれば「優良企業」と評価できます。
なお、業界によって利益構造が異なることから、営業利益率が高いと判断できる基準が異なる点には注意が必要です。
例えば、メーカーや製造業であれば「10%以上」が高いか判断する際の目安となり、小売業やサービス業であれば「5%以上」が高いか判断する際の目安となります。
また、一時的に営業利益率が上昇している企業ではなく、数年に渡って利益率が上昇し続けている企業であれば、より安心して株を保有できるでしょう。
そのため、現在の財務データだけで無く、過去の財務データや営業利益率の推移も確認することが大切です。
数年に渡って利益率が上昇し続けている企業は
・安定したビジネスモデルを持っている
・新規事業が順調である
・コスト削減が進んでいる
上記のような理由が考えられることから、企業の魅力や経営力が高いと判断できるためです。
また、競合他社と比較しながら営業利益率の優劣を評価することも有意義です。
競合他社よりも営業利益率が高ければ、業界内でも優位な立場を築けている可能性が高いと判断できます。
参入障壁が高い業界の企業の例
それでは、実際に参入障壁が高い業界の企業の例を紹介していきます。
上記は、JT(日本たばこ産業)の営業利益率の推移です。
たばこ製造の独占権が認められているJT(日本たばこ産業)の営業利益率は、2021年度決算で21.46%という非常に高い数字でした。
JTは早期退職を募る他にも、工場の閉鎖などで人件費の削減にも取り組んでいることも、高い営業利益率を誇っている理由です。
もう一つ、同じく参入障壁が高い業界の企業として、KDDIの営業利益率を見ていきましょう。
2021年度の決算において、営業利益率が19.53%と非常に高いことが分かります。
このように、参入障壁が高いビジネスを行っている企業は営業利益率が高く、安定して収益を上げる力があると言えます。
参入障壁が低い業界の企業の例
続いて、参入障壁が低い業界の企業の営業利益率を見ていきましょう。
参入障壁が低い業界として代表的なのが、飲食業界です。
例えば、すかいらーくHDの営業利益率は下記のようになっています。
2021年度の決算では6.88%という結果で、先述した日本たばこ産業(JT)やKDDIと比べると、営業利益率が低いことが分かります。
また、同じく飲食業であるトリドールホールディングスの営業利益率は、下記の通りです。
このように、業界ごとで利益構造が大きく異なるため、併せて競合他社同士で比較することも大切です。
高い営業利益率を維持できる3つの条件
高い営業利益率を維持するためには、企業努力の他にも様々な要因が必要となります。
高い営業利益率を維持できる3つの条件について解説していくので、投資先を選ぶ際の参考にしてください。
ネームバリューがあり、値上げ力が高い
値上げをして消費者に物価上昇を転嫁できれば、企業収益の毀損を防ぐことが出来ます。
そのため、ネームバリューが高く、生活必需品を取り扱っているような「値上げ力が高い」企業は、高い営業利益率を維持しやすい強みがあります。
一般的に、商品やサービスの値上げを行うと消費者が離れ、売り上げが落ちます。
しかし、値上げしても売り上げが落ちない競争力を持ち、消費者から高い支持を受けているような企業は値上げしても消費者が離れないため、売り上げを維持できるというわけです。
消費者心理としては、値上げに関するニュースが流れるとネガティブに感じますが、投資家心理からすると、企業の自信の表れと見ることが出来ます。
今後値上げに関するニュースを見かけたら、企業が取り扱っている商品やサービス、競合との優位性について注目してみると良いでしょう。
インフレで大きな影響を受けない
2022年に入って、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響もあり、インフレが進行しています。
インフレが起こると、企業の利益が圧迫されて営業利益率が低くなるのが一般的です。
しかし、業界によってはインフレによる影響を受けず、インフレに関係なく高い営業利益率をマークしています。
代表的な業界が資源関係企業や鉱業系企業です。
エネルギーや原油、鉱石などの資源高は、資源を販売する側からすると増収増益となります。
また、資源権益を持っている総合商社にとっても、資源高は追い風となるため、安定して高い営業利益率を維持できる傾向にあります。
このように、インフレの大きな影響を受けない企業や、むしろインフレを追い風にできるような企業の株は、安心して長期保有できると言えるでしょう。
インフレの状況でもコストが大きく増えない
インフレが起きると仕入れのコストが増えることから、企業収益が圧迫されてしまいます。
例えば、製造業や小売業、飲食業の場合は資源高・輸送コスト・仕入れコストとの上昇に伴い、企業利益が大きく減ってしまいます。
しかし、業界によっては、インフレの状況下においてもコストが大きく増えず、営業利益率が大きく落ちません。
例えば、ITやソフトウェア業界は仕入れる「モノ」が少ないことから、インフレの影響を受けるのは光熱費程度と、かなり限定的です。
つまり、ITやソフトウェア関連の企業は、他の業界と比較してもインフレによるダメージが軽いため、高い営業利益率を維持できる傾向にあります。
これまでに紹介した
・ネームバリューがあり、値上げ力が高い
・インフレで大きな影響を受けない
・インフレの状況でもコストが大きく増えない
上記3つの条件に当てはまる企業があれば、リストアップして営業利益率の推移などを調べてみてください。
3つ全てに該当する企業は少ないですが、1つでも該当する企業は十分に魅力的です。
営業利益率のまとめ
株式投資をする際の重要指標である、営業利益率について解説してきました。
高い営業利益率を安定してマークしている企業は「稼ぐ力」が強く、長期的にも安定して保有できる魅力があります。
つまり、キャピタルゲインもインカムゲインのいずれも期待できる魅力的な企業なので、有力な投資先候補となるでしょう。
営業利益率が高い企業を探す際には、
・ネームバリューがあり、値上げ力が高い
・インフレで大きな影響を受けない
・インフレの状況でもコストが大きく増えない
上記3つのポイントを念頭に置くと良いでしょう。
個別株投資や高配当株投資に興味がある人は、ぜひ営業利益率に着目してみてください。
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