今後の買いタイミングは?2022年9月FOMCについて解説

9月21日に、アメリカの経済方針を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されました。
前回と同様に政策金利を0.75%引き上げる判断がされ、株式市場にも大きな影響が出ています。

アメリカでは依然として高いインフレが続いており、パウエル議長は「物価安定の回復のためには、しばらく引き締め政策を維持する必要がある」と述べています。

つまり、インフレを抑制することを最優先に考え、利上げ継続の方針を示したわけです。

今回は、今回のFOMCの内容、今後の経済への影響や展望について見ていきましょう。

目次

0.75%の利上げ継続

9月21日のFOMCで、パウエル議長は0.75%の利上げを継続する意向を示しました。
また、年内に同規模の利上げを少なくとも1回実施する可能性を示唆し、インフレ抑制の手を緩めることはないと明言しました。

通常、FRBが利上げを行う場合の幅は0.25%ですが、今回で通常の3倍の幅での利上げが3会合連続で継続することとなります。

一連の金融引き締めは高インフレの長期化を回避するために行っており、景気悪化の懸念は一段と強まっていると言えるでしょう。
一般的に、急速な利上げは景気停滞と後退に繋がり、株式市場が停滞します。

実際に、9月21日のNYダウの終値は前日から522ドル下落し、今回のFOMCは投資家心理を冷え込ませる大きな要因となりました。

とはいえ、前月に行われたジャクソンホール会議においても、パウエル議長はインフレ抑制について「やり遂げるまでやり続けなければならない」と述べています。

つまり、今回の利上げは「織り込み済み」という投資家も少なくありません。

なお、FOMCの記者会見でも、パウエル議長は「メッセージは変わっていない」と述べており、景気が減速してからといって、すぐに利下げに転じる考えはないことをアピールしています。

「金利の上昇や経済成長の鈍化、労働市場の減速はすべて国民にとって痛みを伴う。だがそれは物価の安定を取り戻すことに失敗するほどの痛みではない」とも述べていることから、今後もインフレ抑制を最優先にしていくでしょう。

景気の悪化懸念が強まる

0.75%の利上げの他にも、FOMC後の記者会見において、経済に関連する様々な指標に関する言及がされています。

例えば、23年度末の失業率の見通しが3.9%から4.4%になり、また個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率が2.6%から2.8%へ上方修正されました。

失業率と個人家計の負担が高まることから、これらの修正は前回のFOMCよりも景気が悪化する見通しであることを意味しています。

実際に、パウエル議長も「ソフトランディング(経済の軟着陸)を達成しながら物価の安定を回復するのは本当に難しい」と述べています。

また、「利上げのプロセスがリセッション(景気後退)につながるかどうか、それがどの程度になるかは誰にもわからない」とも述べていることから、インフレが長期化することが想定できます。

インフレが続くと金融引き締めも続くため、株式市場の停滞も長引くことになります。

投資家は今後のアメリカ経済や世界経済の景気後退が顕著になる事態に備えておく必要があると言えるでしょう。

8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.3%上昇

日本でもインフレが家計を直撃していますが、アメリカでは日本以上のインフレが起こっています。

ロシアによるウクライナ侵攻が原材料高を引き起こし、8月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で8.3%も上昇、食品とエネルギーを除くコアCPIも6.3%上昇しています。

FRBの使命は「雇用の最大化」と「物価の安定」なので、パウエル議長はこのインフレを抑制することを第一に考えているわけです。

実際に会見においても、「高インフレが食料や住宅、交通などの必需品のコスト上昇に対応できない人々に大きな苦難を強いることを理解している。インフレを目標の2%に戻すため力を尽くしている。」と述べています。

しかし、ウクライナ侵攻が長期化することで原材料費やエネルギー価格が上昇し、今後も高いインフレが継続する可能性は高いです。

今後の利上げのペースを測る上でも、今後のCPIとコアCPIには注目する必要があるでしょう。

次回会合(11月)でも0.75%の利上げが有力

次回のFOMCは11月に行われますが、次回も0.75%の利上げが有力です。

「金融政策のスタンスが引き締まるにつれ、ある時点で我々の政策が経済やインフレに与える影響を考慮しつつ、利上げペースを減速させることが適切となる」と述べつつも、「物価安定の回復のためには、しばらく引き締め政策を維持する必要がある」とも述べているためです。

記者会見において、経済の見通しについて「22年末で0.2%の成長に留まる」と鈍化を想定しており、アメリカ経済は年内になお減速すると見込まれています。

利下げは2024年まで想定されておらず、インフレ率は2025年に目標の2%に緩やかに回帰すると見込んでいることからも、やはり利上げのペースは継続すると見るのが自然です。

また、ロシアによるウクライナ侵攻が止む気配は残念ながら無いため、原材料高に伴うインフレは続くと考えられます。

そのため、ウクライナ情勢をはじめとした国際情勢を踏まえても、次回会合(11月)でも0.75%の利上げが行われる公算が高いと言えるでしょう。

アメリカ以外の動き

アメリカ以外の欧州中央銀行(ECB)、英イングランド銀行などの主要中央銀行も、0.5〜1.0%の大幅利上げを行っています。

ECBは政策金利を0.75%引き上げることを決定し、英イングランド銀行は政策金利を0.5%引き上げる決定を行いました。

ECBのラガルド総裁は、記者会見で「インフレ率が高すぎるため、今後さらに利上げを続けるつもりだ」とコメントしています。

一方で、日銀は世界とは異なる動きをしており、21日の金融政策決定会合において大規模な金融緩和を継続することを決定しました。

スイス国立銀行はマイナス金利を解除したことで、主要中銀でマイナス金利を続けるのは日銀だけとなりました。

日本は欧米ほどインフレが進んでおらず、逆にインフレを起こそうとしています。

また、経済の下支えを優先するために金融緩和を継続したいとも考えているため、日銀だけ主要中銀とは逆の動きを取っているわけです。

実際に、黒田総裁も「当面、金利を引き上げることはない」と表明しており、日本と欧米の金利差は広がっていく見込みです。

FOMC後のパウエル議長の質疑応答(一部抜粋)

Q.利上げのペースを緩めたり、止めたりするのはいつか。

A.インフレを2%に抑えることに尽力し、対応を続ける。利下げは、インフレが2%に戻ると確信できて初めて検討する。
 正確なタイミングを把握するのは難しいが、まだその状況には達していない。現在は最も低いレベルの引き締め状態にやっと到達したところで、道半ばだとみている。

Q. 23年の失業率の見通しを4.4%としているが、歴史的にみて景気後退をもたらす水準だ。景気のソフトランディング(軟着陸)は難しく、インフレを抑えるためには必要か。

A.ソフトランディングは非常に困難である。金融引き締めが景気後退につながるのか、どの程度の経済的な打撃になるのかは誰にもわからない。
金融引き締めが長引くほどソフトランディングの可能性は低下するが、物価安定の回復に失敗すれば、後々にはるかに大きな痛みを伴う。

Q.引き締めが続けば多くの失業者が出る。実際に景気が後退する可能性はどれほどあるのか。

A.確率は分からないが、経済成長が鈍化するのはほぼ間違いない。失業率も上がるだろうが、それでも労働市場の鈍化は必要である。

Q.高インフレが最大雇用を脅かすと指摘しているが、具体的な影響は。

A.多くの国民は、賃金上昇が物価上昇に追いついていないと感じている。支出のほとんどをガソリン、交通費、衣食住などの生活必需品に占めている家庭にとって、インフレは大きな脅威だ。米国のインフレ率は歴史的に2%前後を保ってきたが、この状態を維持することが我々の役目である。

Q.家計や企業はどの程度、どの期間にわたって経済的な「痛み」を覚悟する必要があるか。

A.インフレが収まるタイミングによる。インフレが収まれば、18~20年にみられたような低い失業率、低所得層に対する賃金の上昇と経済回復が期待できる。金利上昇、経済成長の鈍化は国民に痛みを伴うが、物価の安定を取り戻すことに失敗するほどの痛みほどではない。

質疑応答の要旨

質疑応答を端的にまとめると、やはり「利上げは継続する。多少の経済的な痛みが伴うのは仕方が無い」「そして、いつまで金融引き締め(利上げ)をするかも未定」ということになります。

また、金融の引き締めがどの程度の景気後退につながるかどうかは「誰にも分からない」と述べている通り、今後の経済にどのような影響を及ぼすのかは不明です。

インフレの「痛み」の程度や、「痛み」が継続する期間についても、やはりインフレの収まり次第と述べています。

何より、「経済成長が鈍化するのはほぼ間違いない」というコメントもありますが、やはりアメリカ経済や世界経済の停滞や鈍化に備えることはマストでしょう。

FRBとパウエル議長は、インフレ率を2%程度に抑えることを最優先に考えている点は抑えておくべきポイントです。

個人投資家はどのように動くべきか?

21日のFOMCの影響を受け、景気悪化の懸念が強まったことでアメリカ株は軒並み下落しました。

一時的な下落であれば「買い時」と捉えることができますが、残念ながらアメリカのみならず世界経済全体の停滞と後退が懸念されています。

そのため、つみたてNISAやiDeCoなどの積み立て投資はそのまま継続し、個別株やETFに関しては様子を見るというスタンスが無難でしょう。
ある程度織り込まれてきたと思っても米国の景気後退でさらに株価を落とす局面が想定されるため
購入時期に関しては十分に注意が必要です。
個人的には海外の売り上げ比率の大きい銘柄は現状購入を避ける方針です。
リセッション入りに備えてキャッシュポジションを厚くしておく時期かなと考えています。

インフレの加減や今後の利上げのペースは、アメリカ経済のみならず世界の株式市場や日本経済にも大きな影響が及ぶためです。

パウエル議長も「ソフトランディングは非常に困難」「今後の見通しは不明」と述べており、また利上げが行われると、一般的にはお金が投資から貯蓄へと向かい、景気後退に陥る可能性が高まります。

そのため、個人投資家は世界経済の停滞に備え、キャッシュを厚くしておくべきタイミングと言えるでしょう。

まとめ

FOMCは、アメリカ経済のみならず全世界に大きな影響を与える金融会議です。

今回の利上げに関しても「織り込み済み」「1.0%を想定していた」という声もある通り、大きな驚きがあったわけではありません。

しかし、利上げが継続することと、いつまで金融引き締めを継続するかは未定ということもあり、株式市場にとってはネガティブなニュースと言えます。

投資家は今後の利上げの影響を鑑みた上で、投資判断をすることが大切です。

なお、次回(第7回)のFOMCは11月1日・2日に行われる予定です。

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