こんにちは
銘柄を購入する上で決算の進捗やキャッシュフローなんかを見る方は多いと思います。
今回はそれらの見方や考え方について今話題のジョイフルを例に解説していきます。
投資初心者の方には参考になる内容だと思いますので文字多めですが
ぜひ最後までご覧ください。
株式会社 ジョイフル
九州・沖縄エリアを中心に、ファミリーレストランを展開しているジョイフル。
2022年現在では、全国に約630店舗あり、人気Youtuberのヒカルさんとコラボした「冗談抜きで旨いシリーズ」は累計販売数500万食を突破するほどの人気があります。
キャッシュフロー
【営業活動によるキャッシュフロー】
合計額
2021年度 ▲1,699百万円
2022年度 5,571百万円
(4)連結・キャッシュフロー計算書の真ん中あたりにある「営業活動によるキャッシュフロー」の合計額を見てみると、昨年の結果と比べて大幅に改善がされ、大きくプラスに転じています。(▲=マイナス表記)
昨年、大幅にマイナスとなっていた一番の要因を、営業キャッシュフローの項目の中から探してみると、店舗閉鎖損失引当金が▲2,773百万円がマイナス金額が大きいことが読み取れると思います。これは、店舗閉店による損失引当金になりますので、昨年閉店した店舗が多かったのではないかという仮説がたてられます。
※店舗閉店の裏付け:https://www.joyfull.co.jp/company/ir/library/business-reports/
その仮説が正しいかを確認する場合は、事業報告書(下記※参照)を昨年の分と一昨年の分を開いてみるとわかります。(事業報告書の一番最後のページに当時の店舗数が掲載されています)2020年6月期決算時点の事業報告書には、全国に815店あると記載がありますが、その一年後の、2021年6月期決算時の事業報告書を見てみると672店となっているため、昨年は約140店舗の閉店があったということが読み取れます。
一般的には営業キャッシュフローがプラスの場合本業でしっかり稼げていることがわかります。
投資キャッシュフローや財務キャッシュフローと合わせてその企業の現状や将来性を判断する材料となります。
【投資活動によるキャッシュフロー】
合計金額
2021年度 413百万円
2022年度 152百万円
投資フローによるキャッシュフローの合計額は昨年と比べると減少しています。
項目を一つ一つ見ていくと、昨年は有形及び無形固定資産の売却による収入が大きくプラスに貢献した一方、資産除去債務の履行による支出が大きくマイナスに転じておりました。しかし、今期は大規模な収入および支出はなかったことがとがわかると思います。
投資キャッシュフローとはその企業の設備投資や企業の買収などで変動します。
営業CFプラス・投資CFマイナスの場合一般的には設備や事業に投資を行い本業でしっかり利益を出している企業ということが推測できます。
【財務活動によるキャッシュフロー】
合計額
2021年度 ▲946百万円
2022年度 ▲4,946百万円
財務活動によるキャッシュフローは、昨年の結果と比較するとかなりマイナス方向に転じているのがわかるかと思います。
先ずは昨年の結果を一つ一つ見ていくと、長期の借り入れによる収入や自己株式の処分による収入があったことが見て取れます。
しかし、今期はプラスとなる項目がなかった影響で、結果として大きなマイナスという結果になっています。
そのため、財務活動によるキャッシュフローは大幅にマイナスになったものの、借入金の返済に充てており、今期に新たな借り入れがないことや、最終的な期末残高は昨年よりもプラスに転じており、比較的良い結果ではないかと思います。
- 現金と支出のバランス
今期のキャッシュフローの全体を見るとマイナス(△)金額が多いのは、財務活動によるキャッシュフローの中の借入金の項目(返済額)です。ここから読み取れることは、借入金の返済に多くのお金を費やしているということです。特に昨年は借入金を返済しつつ、「長期借り入れによる収入」がありました。これは、借金を返して、また新たな借金が増えてしまったということになります。しかし、今期は返済のみで新たな借り入れによる収入はないため、昨年と比較すると借入金額が減少したことが読み取れます。
- 直近の決算
6月期の決算の結果を読み解き、収益性と安全性について確認をしていきましょう
【収益性】
売上高当期純利益率
「当期純利益÷売上高」
この指標を見ることで、この会社が売上金額に対して、どれだけの利益を得たかということを学ぶことができるようになります。
当期純利益は、連結損益計算書の1ページ目1番下の欄の、「親会社株主に帰属する当期純利益」という項目になります。また、売上高は一番上に記載があります。
「当期純利益÷売上高」で昨年と今期を計算してみると、下記の通りとなります。
< 計算結果 >
2021年度 1,799÷47,645 = 3.79%
2022年度 2,533÷46,615 = 5.43%
今年は昨年と売上金額は大きく変わらないものの、最終的な利益金額を見てみると、大きく金額が上がっていることと思います。そのため、売り上げに対する利益の割合は、結果を見てもわかる通り、上昇しています。
売上高営業利益率
「営業利益÷売上高×100」
次に売上高営業利益率を見てみましょう。
この指標では、売上から「売れた商品の仕入れや製造にかかった費用」と「給料や水道光熱費、広告宣伝物などの経費」を差し引いて残った利益が、売り上げに対してどれくらいの割合になるかを見ることができます。そのため、①売上高当期純利益率と同じく、計算で算出された数値は高いほうが望ましいです。
連結損益計算書の一番上に「売上高」、上から5番目に「営業損失」が計上されているため、この2つの数値を用いて計算します。
本来であれば、上から5番目の行には「営業利益」という項目があるはずですが、ジョイフルの場合は利益が出ておらず、損失が出ているため「営業利益」の欄に「営業損失」として数値が計上されているのです。
< 計算結果 >
2021年度 ▲3,373÷47,645 = ▲7.08%
2022年度 ▲3,104÷46,615 = ▲6.66%
計算結果を見てみると、今期・昨年はどちらも営業損失が出てしまっておりますが、若干改善方向に動いていることがわかります。とはいえ、マイナス金額もかなり大きいため早急に改善が必要な状態です。
【安全性】
次に安全性を見る場合は、「流動比率」を確認します。
まず流動資産とは、短い期間の中で現金化することができるものをいいます。
そのため、現金預金はもちろんのこと、売掛金や有価証券、在庫などが流動資産に含まれるのです。
また、その一方では、流動負債は一年以内に返済を迎えるものを指します。
そのため、1年以内に返済予定の短期借入金や、支払手形、買掛金などが該当しますので、しっかりと覚えておきましょう。
また、流動比率は200%を超えると安心といわれていますが、ジョイフルの流動比率はどれくらいあるのかを見ていきましょう。
流動比率
「流動資産÷流動負債×100」
2021年度7,253÷10,269=70.63%
2022年度6,150÷9,103=67.56%
昨年に引き続き今年も流動比率は悪いままとなっています。ちなみに流動比率が100%を下回ってしまうということは、現状は借金を完済できる当てがないということになります。そのため、安全性に関してはかなり低く、利益が出ているのに借金が返せなず、黒字倒産という危険性をはらんでいることがわかります。
流動比率は特に高配当の小型株を購入する上で確認しておかなければなりません。
高配当銘柄への投資は長期保有ですから、キャッシュフローや自己資本比率、流動比率などの項目は
必ずチェックするようにしましょう。
配当性向や自社株買いなどの株主還元
【配当性向について】
配当性向とは「1株当たりの配当金÷一株当たりの利益」で求められ、今期に出た利益のうち、どのくらいの金額を配当に回しているかということを確認することができます。
配当性向は、高ければ高いほど株主に利益が多く還元されているということになりますが、その一方で会社に残る資金は少なくなってしまいます。
そうした場合に新しい設備への投資や人材の確保などにお金を使うことができずに、長期的にみれば株主にとっては損してしまうこともあるので、一概に高ければ良いとはいえません。
ジョイフルの場合は、今期も昨年も配当を行っていませんでしたので、配当性向については算出ができません。
【自社株買いについて】
自社株買いとは、企業が発行した株式を買い戻すことを言います。
企業が自社株を買い戻すと、発行済み株式の枚数が減るため、1株当たりの利益が増える傾向にあります。
更に投資家からの評価が高まるため株価上昇の要因となります。
- 売上は長期的に成長しているのか
売上が長期的にみて成長しているかは、決算短信をさかのぼって確認する必要があります。また、ジョイフルの場合はなかったのですが、企業によっては「決算ハイライト」として、売上高や利益額の推移をグラフでまとめているところもあります。
【売上推移】 【利益額推移】
2018年 32,187百万円 176百万円
2019年 72,882百万円 ▲4,947百万円
2020年 62,324百万円 ▲9,323百万円
2021年 47,645百万円 1,799百万円
2022年 46,615百万円 2,533百万円
過去5年間の売上と利益額の推移を見てみると、2018年から2019年にかけては売り上げは倍以上に増えたものの、利益はマイナスになっています。
その後2019年に引き続き、2020年も売上が好調だったものの、やはり肝心の利益額はマイナスとなっています。
その後はコロナ禍の影響を受けてなのか、売り上げが低迷していますが、利益はしっかりと確保できている状況となっています。
配当性向が高すぎると内部留保が少なくなりますから、その企業の現状と併せて判断する必要があります。
個人的には30%〜50%が好ましく、60%を超えている銘柄については増配年数や業種やCFなどと併せて将来性を考慮して検討するようにしています。
EPSは伸びているか
EPSとは1株当たりの利益のことで、「当期純利益÷発行済み株式総数」で求めることができます。
EPSを見る理由は、1株当たりの利益が増えれば、配当金の金額も増える可能性があり、投資家にとって大事な数値の一つだからです。
単純に当期純利益が昨年と比べて増えていても、増資をして株式総数が増えていたら、1株当たりの利益は減ってしまいますので、注意が必要です。
「当期純利益」は、(2)連結損益計算書の1ページ目一番下の欄「親会社に帰属する当期純利益」のことで、「発行済み株式総数」は決算短信2ページ目の(3)発行済株式数の③期中平均株式数を使用します。
< 計算結果 >
2018年 \176,000,000÷29,411,671=\6
2019年 ▲\4,947,000,000÷29,431,239=▲\168
2020年 ▲\9,323,000,000÷29,442,285=▲\317
2021年 \1,799,000,000÷30,377,333=\59
2022年 \2,533,000,000÷30,852,618=\82
2019年、2020年はマイナス計上となっていますが、2021年からは2018年と比較しても、1株当たりの利益額は徐々に増えてきていることがわかります。
ROA,ROEについての解説
ROA(総資産利益率)
「当期純利益÷総資産×100」
ROAでは、会社が保有している総資産に対して、どれだけの利益を上げることができたのかを見ることができます。保有している資産を効率的に活用することで利益につなげることができると、ROAの数値は高くなります。
ROAは一般的に5%を超えていれば優秀とされております。
「当期純利益」は、(2)連結損益計算書の1ページ目一番下の欄「親会社に帰属する当期純利益」のことで、「総資産」は (1)連結貸借対照表の1ページ目、一番下の「資産合計額」の金額となるため、その数値を基にROAの算出をしてみます。
< 計算結果 >
2021年度1,799÷30,800=5.84%
2022年度2,533÷29,584=8.56%
昨年と比較すると、ROAの数値が上がっていることがわかります。このことから、昨年と比べて、資産を効率的に活用し、より利益を上げることができるようになったことがわかります。
ROE(自己資本当期純利益率)
「当期純利益÷自己資本×100」
ROEは投資先企業を見極めるときに、基準となる指標になります。
なぜかというと、投資した資本金額に対して、企業がどのくらいの利益を上げられるかという点を確認できるからです。
そのため、ROEは高ければ高いほど投資家にとって良い結果であると言えます。
ROEは一般的に10%を超えていれば優秀とされています。
「当期純利益」は(2)連結損益計算書の1ページ目、一番下の欄「親会社に帰属する当期純利益」の金額となります。また、「自己資本」金額は決算短信の1ページ目、(2)連結財政状態の表下に(参考)として、自己資本の金額が載っているため、その数値を基にROEの算出をしてみます。
< 計算結果 >
2021年度1,799÷3,180=56.57%
2022年度2,533÷5,755=44.01%
昨年と比較すると、ROEの数値が下がっています。そのため、投資金額に対するリターン(利益)は減少傾向となっており、投資家目線で見るとあまりよくない結果と言えます。
まとめ
□キャッシュフロー
□収益性
□安全性
□流動比率
□配当性向
□EPS
□ROE・ROA
これらについて解説しました。
どの項目も投資する銘柄を選定する上での重要な確認項目となってきます。
しっかり時間をかけて銘柄を選び、経済的自由に向けて頑張っていきましょう。
ではまた!
コメント